新潮 2018年 12 月号

◆図書室[一三〇枚]/岸 政彦
私は思い出す。大阪の片隅を男の子と歩いた、あの冬の日のことを。ふたりは人類滅亡後の世界で何を見たか? 静かに光る人生の瞬間。

【芥川賞受賞第一作】
◆アジサイ/高橋弘希
妻が家を出てから、庭にアジサイが咲いた。「理由」を探す男を侵す、甘い匂いと狂気。

◆ドレスセーバー/大前粟生
京都の鴨川デルタでは人が遭難し、私はそれを救助する。新世代の想像力、小誌初登場!

◆続アイオワ日記/滝口悠生
ハリケーンの警報が鳴っても、危険の感度は作家の出身国に紛争があるかによって違う。

◆ヘミングウェイ未発表小説
「中庭に面した部屋」/訳・解説 今村楯夫
パリ解放の日の戦地体験を描きながら、生前の発表を著者が禁じた幻の作品、遂に公開!

□□ 特集 □□
差別と想像力――「新潮45」問題から考える
■危機を好機に変えるために/星野智幸
■回復に向けて/中村文則
■すべてが嫌だ/桐野夏生
■平成最後のクィア・セオリー/千葉雅也
■言葉のあいだの言葉/柴崎友香
■「見えない世界」の外へ/村田沙耶香
■権威主義・排外主義としての財政均衡主義/岸 政彦

◆犬とエスキモー
――エトガル・ケレット、日本からの視察団と語る
/エトガル・ケレット 構成・訳 秋元孝文
特別な歴史。内在する圧倒的な差異。何から何まで日本と違う国からの刺激的メッセージ!

◆数多くの〈五月〉の後に/四方田犬彦
68年、あの興奮の日々から50年。回顧的情熱に満ちたパリから、無関心を装う国を考える。

◆そして、言語から生命へ[連載完結]/森田真生
フレーゲ、ウィトゲンシュタインから人工知能・人工生命へ。人の思考をめぐる旅、完結!

【宮本輝『流転の海』シリーズ完結記念】
◆敗戦後の日本で「父」となる男を描く
――宮本輝『流転の海』論/田中和生
◆巨大なる未完のテーゼ
――『流転の海・第九部 野の春』を読む/助川幸逸郎
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947円(税86円)
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